記憶のかけら 勇人編第10話

夏紀編の第10話はこちら小説&まんが投稿屋

今回も勇人編のほうが長めになりました
ちょっとイメージが出来やすそうなので今日はこのままの勢いで続きを考えようと思います

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4月23日

「今日は重大な任務があるため帰るのが遅くなる。だが心配するな! 必ず生還して帰ってくるぜ。じゃあバイビー」
俺は今日の朝、机の上に置いてあった手紙の内容を読みながら夏紀と登校している
重大な任務ってのは仕事なんだろうが、心配はしてないんだよな
しかも生還して帰ってくるぜって日本語的におかしくないか?
なによりバイビーって…いつの時代の言葉だよ
「あいかわらずどこまで本気の文章なんだか。それにしても私が行った時にはもう置いてあったから、恭介さん早くに家を出たんだね」
夏紀が来るのが七時半くらいだから、それよりも一時間は早く起きて準備とかしてんだろうな
俺には真似できそうにないな…土曜日どうしよ…
「ねえ勇人。静音さん今日も仕事で恭介さんも遅くなるみたいだし、今日は久しぶりに家来て夕飯一緒に食べない?」
たまにお邪魔して一緒に夕飯食べたりしている
ありがたいとは思うが、やっぱりいろんな意味で遠慮してしまうな
「いいよ。おばさん達に迷惑だしさ」
「いまさら何言ってんのよ。それに勇人は一人だとインスタントですませるから心配なの。お母さんもそう言ってたし気にしなくていいよ」
一人だけの飯を作るってのは結構面倒だからついインスタントに頼ってしまうが、さすがよく見てるな
まあ今に始まった事でもないし、下手な遠慮はかえって失礼かもな
それに夏紀は結構頑固なところがあるから、言い出したらなかなか引かないし
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。いつ頃行ったらいいんだ?」
「今日も私は部活とかあるし、愛理ちゃんの家にも少し行くから八時くらいがいいかな」
「わかった。楽しみにしとくよ」
「うん! 私も作るから期待しててね」
夏紀はうれしそうに笑いながら話をして、俺たち二人はいつものように坂道を登って行った

「なあ勇人。俺の完璧なデートプランを聞いてくれないか?」
HRが終わった休憩時間に、康太が振り返ってやたら自信のある感じの声で話しかけてきた
昨日の愛梨花との事なんだろうが、俺には全く関係のない話だ
「関係ないから聞く気になれん」
「羨ましいからってすねるなよ」
羨ましくねーよ
「聞きたいだろ! 聞いちゃいたいだろ! いいんだぜ聞いても!」
ようは聞いてほしいんだろうな…めんどくせーな
「わかった。聞いてやるからそんなに興奮するな。変な病気がうつりそうだ」
「変なとは失礼な! これは恋の病って言ってな! どんな偉大な人間だろうと必ずかかる神秘的な…」
「わかったから騒ぐな。で、なんだよプランって」
「ちっここからがいいとこだったのに。まあ勇人が俺の完璧なプランを早く聞きたいって心の底から思ってるみたいだから話してやるよ」
1%も思っちゃいねーよ
「まず午前の部と午後の部というのがあるんだが、午前の部ってのは…」
午前だの午後だのってどこの運動会のスケジュールだ
俺がそう思っていて、康太が午前の部ってのを説明しようとした時だった
隣の席に座っているお嬢様から妙な殺気を感じるんだよな
「さっきから何の話をしてるのかしら?」
笑っちゃいるが、俺達だけだったらどんな罵声があっただろうか
「愛梨花とのデートプランを熱く語るつもりみたいだぞ」
「デート? 誰がするって言ったのよ」
あれ? 一応そういう話にはなってるんじゃないのか?
「愛梨花ちゃん恥ずかしがらなくてもいいんだぜ。俺達の関係は一歩進んだんだから」
「勘違いしないでくれる。それより勇人、夏紀から聞いてないの?」
何か言ってたかな? 思い出せない
「何のことだ? 特に何も聞いてないんだが…それよりここ教室だからな」
「…今度の日曜日に咲美さんがこの街の案内も兼ねてどこか遊びに行きましょうとお誘いしてくださったんです。それで二人だけと言うのも何なので、夏紀さんと勇人さんと康太さんも呼んで五人でという話をしたんです」
すげーギャップ…見てると面白いな
それより夏紀からそんな話は聞いてないな…忘れてただけか?
「夏紀さんは行くみたいです。それと夏紀さんが勇人さんに話しておくと聞いていたのですが…言い忘れたのでしょうか?」
「たぶんな。まあ日曜日なら特に用事もないだろうから問題はないかな」
「そうですか。それで康太さ…」
康太はハニワの様に固まって動かないでいる…デートじゃなくなったんだからショックなのも無理はないか
「え…愛梨花ちゃん…俺たち二人だけの大切な時間は…」
「なんのお話ですか? まったく心当たりがないのですが」
笑いながらさらりと言ってるが、素の状況で言われるよりも精神ダメージが大きそうな言い方だな
その言葉がよほど効いたのか、康太は少し泣きながら「トイレに行ってくる…」と言って教室を出て行った
康太の後姿を見た愛梨花は「少しやりすぎたかしら」と小声で話しかけてくる
「大丈夫だろ。いつもの事だし」
とはいえ康太にもたまには助け船を出してやろう
「ただ愛梨花が康太に勘違いされないように冷たくしてるのは知ってるが、康太に冷たくばかりしないでやって欲しいんだ。時々でいいから康太に優しい言葉をかけてやってくれよ。飴と鞭みたいに」
「嫌よ。なんで私がそんな事を」
「考えてもみろ。もし康太に冷たくばかりして康太が大泣きしたらどうする。その原因がお前にあるなんて知られたら教室でのイメージが崩れてしまうだろ」
「なっなるほどね。それは確かに困るわ…不本意だけど…たまにね…」
感謝しろよ康太…これで愛梨花はツンデレにクラスチェンジだ
「じゃあ練習も兼ねて、とりあえず帰ってきた康太に優しくしてみたらどうだ?」
「…仕方…ないわね」
愛梨花は顔を少し赤くして何かに耐えるような表情でそう言った
「あと弁当は康太にやればいい。それが康太にとっては最大の飴だからな」
「そう…まあいいわ。勇人には夏紀が作ってるみたいだし」
感謝しろよ康太…これで愛梨花特製の地獄弁当はすべてお前のものだ

しばらくして康太が教室に戻ってきた
そして康太が自分の席に座ると…
「康太さん…その…さっきは言い過ぎてごめんなさい…えっと…お弁当作ってくるので…良かったら昼食に召し上がってください」
「愛梨花ちゃんのお弁当か…ありがたく…いただきます…」
康太はまた泣き始めてしまった…泣くほど嬉しいならもっと笑えばいいのに
「なあ勇人…お前がこういう展開に仕向けたのか?」
康太は泣きながら小声で俺に聞いてくる
「感謝しろよ康太…これで食堂とはおさらばだぜ」
「俺がこの世でおさらばしちまうだろ。お前は咲美の件で懲りてないんだな」
そう言えば忘れてたな…今度から気を付けるか
「でも一生懸命作った弁当を美味しく食べる姿に女の子はキュンと来るさ。だから頑張れって」
「あのさ勇人…そう言う事って俺が言うセリフじゃないか?」
…恭介さんとか康太の影響受けたんだろうか? マジで気をつけよう


キーンーコーン カーンーコーン
やっと昼休憩になった
今日は水曜日なんだが、水曜日は一から五時間目まで数学、国語、英語、社会、理科の五教科だから面倒なんだよな
「愛梨ちゃんから聞いたんだけど、言うの忘れててごめんね」
休憩が始まるといつものように夏紀がやってきて、日曜日の事で話しかけてきた
「まあいいよ。恭介さんとか葵に会ったんだから忘れるのも無理ないだろ。久しぶりに会ったみたいだし」
「うん、二年とちょっとかな。でも恭介さんは変わってなかったな。葵ちゃんはちょっと幼さがなくなってる感じはしたけど」
葵が変わったのはわかるが、恭介さんがあのままってのはどうなんだ?
「呼ばれて飛び出て参上です!」
いつも思うが、いつの間に来たんだよ咲美
こう言うのもなんだが呼んではないぞ
「いつもよりテンション高いな。何かあったのか?」
「日曜日の事考えたら楽しみで。先輩は聞いてますか?」
「ああ夏紀から聞いたよ」
「そうですか。楽しみですね。あっこうちゃん! 昨日言い忘れたんだけど今度の日曜日に…」
「あーー! 俺たち二人の大切な時間がーー!」
康太は愛梨花とデートができない事を思い出したらしく、また泣きだしたようだ
「こうちゃん…何かあったんですか?」
「聞かないでやってくれ。あいつのためにも」
「そうですか。でもこうちゃん日曜日の事知ってるみたいなので話す必要なさそうですね」
「ほら、早く座ろうよ」
俺と咲美が二人で話していると先に席に座っている夏紀がそう言った
咲美は夏紀の隣に座り、俺は自分の席に座った
「勇人、これお弁当ね」
席に座るとほぼ同時に夏紀から弁当を受け取る
「はい…こ…康太さん…お弁当です…」
すげーぎこちないというか、お互い喜んでねーな
康太も受取り俺たちはみんな弁当のふたを開ける
夏紀が作ってくれた物は、ハンバーグやタコの形をしたウインナー、卵焼きやミニトマトなどが入っている
夏紀が作る弁当には冷凍食品がはいっているのを見たことがないから手間もかかると思う
今言うのは照れくさいし、今度お礼に何かしようかな
まあその事はいいんだが、隣の弁当は…思ったより見た目はまともだな
えーと、ジャガイモやゴボウの煮ものが入っている
たぶん夏紀が教えたものだろう
その他には冷凍食品の揚げ物系が何個かあり、卵焼きも入っている
見た目では味がわからないから何とも言えないんだが…おかずが茶色い弁当だな…
「いただきます」とそれぞれが言って食べ始める
夏紀が作ってくれる弁当はいつもうまい
俺の好みのものも知っていて、卵焼きとかの味付けが俺好みに作ってくれる
逆に嫌いなものも知っていて、ミニトマトとかあるんだよな…日頃から「好き嫌いしちゃだめ」なんてよく言われてるから残すわけにもいかない
「康太さん、お味はどうですか?」
愛梨花は康太に弁当の感想を聞いた
康太は煮物を一口食った後、むさぼるようにご飯を口に入れそれを飲み込んだ後「美味しいよ」と一言言った
表情から察するのまずいというわけではなさそうなのだが、あんなにご飯を口に入れる所を見ると余程うまかったのか?
「今日は被害少なさそうだな」
俺は愛梨花に聞こえないように注意しながら康太に話しかけた
「まずくはないんだよ。あれだけご飯を口に含めば」
「どういう意味だよ?」
「バランスは良さそうなんだが、調味料が多すぎて辛いんだよ」
なるほど…醤油とか砂糖とかのバランスが良くても量が多かったのか
「でも、昨日があれだったからかなり進歩したみたいだな」
「さっきから何二人でこそこそ話してるのよ」
俺たち二人だけが話しているのが疑問だったのか、夏紀が聞いてきた
「いやなんでも。それより康太、愛梨花のためにも正直言ってやれよ」
「えっ!? 美味しくなかった?」
素に戻ったな
「いや味付けのバランスはいいんだけど、調味料が多すぎてちょっと辛いなと思ってさ。これを薄味にしたらかなりうまいと思うよ」
康太にしては結構まともな事言ってるな
「そっか。いまいち分量がわからないのよね。もっと勉強しないとね」
「がんばってね愛梨ちゃん。それとここ教室だから気を付けてね」
夏紀も俺と同じことを思っていたんだな…
「…はい。頑張ります」


「八時か…そろそろ行こうかな」
放課後に夏紀たちと別れて帰った後、約束の八時まで一人で時間を潰していた
母さんも恭介さんも仕事で今は家にいない
俺は準備をして玄関に鍵を閉めて、恭介さんがいつ帰って来てもいいようにポストに鍵を入れ夏紀の家に向かった
ピンポーン
インターホンを押して少し待つと、ドアの鍵を開ける音がして夏紀が出てきた
「ごめん勇人。ちょっと帰るのが遅くなちゃって。もう少ししたらできるから私の部屋で待ってて」
「ああ、わかった」
夏紀はそう言った後リビングに向かい、俺は夏紀の部屋に向かった
「いつ来ても片付いてる部屋だな」
俺は夏紀の部屋に入った後、独り言でそう言っていた
しかし、何しようかな…夏紀の部屋にはテレビはないし、歌を聞こうにもラブソング系が多いから俺の趣味ではない
かと言って色々あさる訳にもいかないし…大人しく待ってるか
………………
………………
………………
十分経っても夏紀が呼びに来る気配はない
たかが十分ではあるが、何もしないで待っているのは結構長い
じっとしていてもつまらないから、俺は本棚に向かい適当な本を探す
「夏紀って本当に恋愛もの好きだな」
すべてではないが夏紀の持っている本(本棚にある本)の多くが恋愛ものだ
その他にも犬などの感動小説などもある
「なんだこの犬? パト○ッシュか…名犬○ッシーかよ」
小説ばっかで漫画がない…雑学の本?
俺は手にとって雑学の本を読んでみる
「なになに…アイスクリームに賞味期限がないのはなぜ?」
そう言えば見たこと無いけど…えーと、アイスクリーム類は期限や保存方法を表示しなくてもいい事になっているため
マイナス十八度以下では細菌が繁殖する心配がないことや原料が単純なため長期にわたって保存しても品質がそれほど変わらないためである
「なるほど。でも原料が単純って言われても最近のは結構単純じゃなさそうなのもありそうなんだけど。チョコとかクッキーとか」
まあいいや…えーと他には…海老フライの衣の比率はJ○Sで決まっている…まじかよ
なになに、品質表示基準によると一尾六グラム以下のエビは衣率六〇パーセント以下
六グラムを超える海老は衣率五〇パーセント以下と決まっている
これを満たしていなければ衣の比率を表示しなければならない
「こういう細かい事に基準付けるんだな。満たしてないもので表示してなかったら法律では違反になるんだよな。違反してテレビにでも出たらなんか情けないな」
他にも色々あったが俺は雑学の本を戻す
「なんか他にないかな…」
色々出し入れして探していると、つい何冊か本を落としてしまった
「夏紀が来る前に戻して…」
やべ! 日記帳が開いて落ちてるよ
不思議なもので、他人の秘密と言うかそう言うのってなんか気になるよな
例えば日記何書いてるんだろうとか…
何考えてんだ俺は! そんなことしたら夏紀が嫌な思いするし、第一俺だったらしてほしくない事だ
ここは何も見なかったことにして大人しく片付けて…
「勇人お待たせ! 今日の夕飯はすっごくおい…」
なんでこのタイミングで来るんだよ…よりにもよって閉じようと手に取った瞬間に…
「…何してるの」
夏紀は静かな声で、それでも本気で怒っている感じで俺に聞いてきた
「いや読んだりとかしてないから勘違いするなよ。本探してたら落ちてさ。だから拾って…」
「こんな事…しないって思ってたのに…信頼してたのに…」
「夏紀、本当に読んでは…」
「出てって!」
夏紀は俺から日記帳を奪い取った後にそう言った
なんだよ…俺の話には聞く耳持たないってのか
確かに夏紀の気持ちわからない訳じゃないけど…なんか一方的なんて納得いかねーよ
「わかったよ…おばさん達によろしく言っておいてくれ。じゃあな」
俺は感情をできる限り押し殺して静かにそう言い部屋を出た
夏紀は返事をしなかった
そして俺は一言「お邪魔しました」と言って自分の家に帰った

コメント

 
このコメントは管理人のみ閲覧できます
今回は夏紀編のツッコミが面白かったね

勇人や夏紀、康太などは表情が脳内で思い浮かぶんだけど愛梨花はしゃべっている時の表情が脳内再生できないですね
声は私の脳内で声優の松井菜桜子三の声で再生されるんだけど
猫かぶってるときと素のときの差が勇人がすごいギャップだというほどには感じられないからかな?
読んでいただきありがとうございます!

ちょっとギャグ性が薄いかなと思っていたので夏紀編で美奈子を少し前に出しました

>愛梨花の表情が思いかばない
というのは僕の表現の未熟さゆえですね
僕の中では表情やしゃべり方などが想像できますが、それをうまく文章表現できていないようです
そういうところを気をつけながら続きはやっていきます
このコメントは管理人のみ閲覧できます

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